濡れた手をひらいたまま突っ立っていると、目の前に魚が現れた。


激しい川の流れに逆らいながら泳いでいく魚たち。


うろこが剥がれてキラキラと輝き、その傷口からはほんの少しの血が流れ出た。


あ……あ……あ……。


魚が水面へ向かって大きく跳ね上がる。


それにつられて、桜子の体も大きく跳ねた。


ピチョン……。


あ――…。


ハッと思った瞬間に、目の前の魚はいなくなり祭り騒ぎが戻っていた。


濡れたままの手を浴衣で拭い、喧騒の中へと入り込む。


ヨーヨーから零れ落ちた水が気になったけれど、振り返ることはなかった――。