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桜子は自室へ戻るとぼんやりと手紙を眺めていた。


開けるべきか、そのまま置いておくべきか、わからない。


昔の書物は沢山読んだ。


歴史に興味があって、古いものの展示会にもよく足を運んでいる。


この紙で出来た手紙だって、すごく貴重なもので珍しい。


でも……。


怖い。


昔の手紙は嘘をつく。


修哉はそう言った。


文字が書かれているだけだから、いくらでもなんでも書けるんだ。


事実を正確に記憶し相手に伝える今の手紙とは違う。


悩んでいると部屋の中にチャイムの音楽が鳴った。


「はい」


手紙をテーブルに置いて振り向くと、お風呂上りの修哉が顔を覗かせた。


「あ、お風呂あがったのね」