「いやぁっ!」


悲鳴を上げて目を覚ました。


「桜子?」


すぐに修哉がかけよってくる。


「金魚が、金魚が。浴衣の中の金魚が私だったの!!」


修哉の服の袖をつかんで言うと、「落ち着け」と、背中をさすられる。


大きな手が自分の背中を行ったりきたりしていると、次第に涙が浮かんでくる。


「私、一瞬でも思っちゃったの。楽しいって。祭りが楽しいって」


「それは大変だ。それが夢じゃなくて本物の祭り戦争だったら、取り込まれて帰って来れなくなってるぞ」


「金魚になって、浴衣の中から出られなくなるところだった」


「そう。だけどそれは夢だ。現実じゃない」


桜子は自分の額に手を当てて汗を拭った。


「さぁ、ご飯が出来てるよ。起きられるか?」


「えぇ……」


まだカタカタと小刻みに震える体を支えてもらいながら、ソファから立ったのだった。