でも、そんなにすばらしい行事ならば途絶えたりするハズがない。


今や《祭り》と呼ばれる行事はどこにも存在しないのだから、いくらすばらしくても受け継がれるものではなかったのだと思う。


「あぁ、サッパリしたわ」


そう呟き、脱衣所へ出ると桜子と同じほどの背丈の四角い箱の中に入る。


箱の中で四方から出てくる風で水分を飛ばし、ガウンをはおる。


箱から出てきたときにはすっかり髪の毛も乾いていた。


「桜子?」


脱衣所のドアをノックする音と、彼の声が聞こえてきて桜子は手櫛で髪を整えた。


「修哉、どうしたの?」


平然とした顔で表へ出ると、同棲中の修哉が不安そうな表情で待っていた。


「こんな時間にお風呂に入るだなんて一体何を考えてるんだい? もし水神様に見つかったりでもしたら――」


「大丈夫よ、湯船にお湯を張ったわけじゃないもの」