すると、また女の子が笑い始めた。


「お姉ちゃん、金魚はお客さんじゃないのよ。売られてるのよ」


「え?」


「ほら、あそこ」


不意に立ち止まり、女の子が出店の1つを指差す。


《金魚すくい》


紺色の旗にそう書かれている。


「あそこにいるの?」


「行こう」


今度は桜子の背中をグイグイ押していく女の子。


「えっえっえっ?」


自分が先に歩くなんて。


戸惑っていると、店の前まで来てしまった。


「いらっしゃい」