「行こう」


そう言われてグイッと引っ張られるとほぼ同時に、さっきまで灰色の世界は消え、色とりどりのチョウチンや出店に変わった。


あぁ……祭りだ。


また祭りの世界に迷い込んでしまった。


焦る気持ちとは裏腹に、桜子の足は女の子について歩く。


誰もいなかった出店には威勢よく客寄せする男の姿が見えて、祭り客たちで賑わいはじめる。


「どこに行くの?」


「いいところ」


少し大きな声で訊ねると、女の子はチラリと振りかえりそう答える。


女の子の浴衣の中で泳ぐ金魚を見ていると、手紙の事を思い出した。


「金魚は祭りにいるの?」