桜子の手の中にある真っ白な手紙に視線を落とす。


「ほう……これは和紙という紙でできている手紙だ。今時こんなもの手に入らないぞ」


最初は演技だったおじいさんも、あっという間にその手紙に釘付けになる。


手に取り、その感覚を確かめるように何度も何度も撫でている。


「開けて、読んでみて?」


「いいのかい?」


「ええ」


「ほう……金魚か」


「ねぇ、金魚って海にいるのよね?」


「海? 金魚は海ではなく夜店で泳いでおる」


「よみせ? よみせってなに?」


「祭りだよ。祭りの出店の中に金魚すくいというヤツがあって――」