真っ白な壁紙に真っ白な家具。


それらにかこまれていると、時折自分がこの家で、この世界で1人になったような気分になる。


が、そんな時はきまって桜子が声をかけてくれ、一緒に食事を取るのだ。


そんなタイミングのよさというもの、死んだおばあさんにそっくりだった。


天井から下りてきた洗面台で顔を洗っていると、ノック音が響いた。


今時各部屋についているチャイムを鳴らさずに手でノックするなんて、桜子くらいしかいない。


大切な用事の解きでも軽快な音楽が流れるのが嫌なのだそう。


「起きてるよ」


そう声をかけるとすぐに扉が開き、ガウン姿の桜子が顔を覗かせた。


「もう熱は下がったのかい?」