たったそれだけの文章を中央に大きく書かれている。


桜子は手紙を何度も何度も読み返し、そして眉間にシワを寄せて考え込んだ。


忘れている?


私が?


なにを?


家から滅多に出る事のない生活なので、どこかになにかを忘れて帰るなんてことあるハズがない。


もしかしたら見たい映画を見忘れているとか?


それとも仕事の事?


修哉と何か約束ごとでもしていたっけ?


堂々巡りの記憶の中でさまよっていたが、やがて「思い出せない」と、首を振ってため息をついた。


私ったら何かを忘れたことも忘れちゃったの?


熱のせいかも。