ニコニコ微笑む水神様はそう言いながら少女の体をよじ登り、大きな塔になっていく。


あのままでは彼女が溺れてしまう!


桜子は一瞬迷ったが、次の瞬間には駆け出していた。


「ダメ、ダメよ!!」


溢れかえる水神様の中に顔を突っ込むと、そこは湯船の中のようだった。


ユラユラ揺れる視界の中には少女の持っていたヨーヨーの破片が浮いている。


それがなんとも魅力的で、空中をフヨフヨ浮いているように見えて、桜子はこれまた書物で呼んだ《海》というものを思い出していた。


海とはきっとこんな感じなのだろう。


少女を助けるハズだったのに心が躍っているように感じる。


そっと手を伸ばしてヨーヨーの破片をツンッと指先でつつく。


まるでそれが魚であるかのように後を追って泳ぐ。