散歩ついでに母に頼まれた醤油をスーパーで買い、買い物袋を腕に提げて歩く。醤油といっても実家サイズは巨大なペットボトルだ。なかなかに重い。
感傷に浸ってうっかり散歩し過ぎてしまった。そろそろ父が帰ってくる頃だろう。急いで家に帰ろうと、腕に食い込んでくるビニール袋を持ち直した時だった。
「ーー佳奈?」
一瞬、辺りの景色がモノクロになる。
色がすべて消えて、音さえかき消えて。
ーー目の前に現れた彼を除いて、時が止まったかのようだった。
「やっぱり、佳奈だ。久し振り」
「……樹」
もう7年も会っていなかったというのに、まるで昨日も会っていたかのような笑顔を向けて。
幼なじみでもあり、元カレでもある樹が、そこに立っていた。