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「あら、日曜に帰るの? しばらくゆっくりしていけばいいのに」


日は沈んだとはいえ、いつものひとりの時とは比べものにならないほど早い時間。既に夕食を食べ終えた私は、デザートの三角に切られた食べ頃のスイカにかぶりついていた。スイカはよく冷えていて、お酒を飲んで少し火照った体の熱を下げてくれる。


「だって、仕事あるし」


我ながら、愛想のない娘だとつくづく思う。素っ気ない態度には慣れている母は特に気にする風もなく、週末の特売が載っているチラシを選別していた。父は晩酌を終えて歯を磨きに洗面所へ行っている。


「まさか一緒に帰ってくるとは思わなかったから驚いたわよ。……はあ、あなたが、あのまま樹くんと続いていたらねえ。今頃結婚してたかもしれないのに」

「……」


話題に困るとすぐこれだ。先ほど余所行きの声で嬉しそうに樹と話していたところを見ると、今のは本音なのかもしれない。


「佳奈には言ってなかったけど、今は樹くんのところにお酒の配達頼んでるの。お父さんの好みもバッチリ覚えてくれているし、本当に助かってるわあ」

「ふうん……そう、なんだ」


知らない銘柄だったけれど、確かに美味しいお酒だった。樹は父の好みを私以上に知っているようで、他にもお薦めのものをいくつか見繕ってきていた。そんな樹の心遣いに気を良くして、結局母は全部買ってしまったのだ。

その商売上手な姿を見て、樹も立派に働いているんだと知り何だか感慨深い。樹と別れたのは高校を卒業した春だったから、それ以降の彼のことは何も知らないのだ。

ーー記憶の中の樹は、学ランを着たまま時が止まっている。