「ご、ごめん……」

 言いたいことは山ほどあったが、これ以上は無駄だと葵も思い、結局、素直に謝罪を口にしてしまった。

 そんな葵に母親は満足げに頷くと、今度は陽太に「ねえ」と声をかけた。

「ハル君、そのヒマワリの種はどうするの?」

「これ? もちろん植えるんだよ!」

 母親に慰められてすっかり機嫌の戻った陽太は、満面の笑顔で言う。

「けど、僕の家の庭は狭いから植えられなくて。だから、代わりに葵ちゃんちで育てちゃおうかな、って思ったんだ」

「あらま!」

 母親の表情がパッと輝いた。

「それって素敵じゃない! ね、葵もそう思うでしょ?」

「いや、確かにヒマワリは好きだけど……。でも、勝手に植えたりしたらお父さんに怒られない?」

「大丈夫よ」

 葵の心配をよそに、母親は自信満々に答えた。

「お父さんにはお母さんが責任持って説得するから。ま、反対される前に植えちゃえば文句なんて言えなくなるわよ」

「うわっ! 最低な母親だな……」

「なんとでも言いなさいな」

 葵が突っ込みを入れると、母親は両腕を前で組んで踏ん反り返った。