食事も終盤に差しかかった頃、陽太は、「そうそう」と何かを想い出したかのように口を開いた。

「僕、今日はいいもの持って来たんだ」

「いいもの?」

 ほぐした魚の最後の一口分を口に運びかけて、葵は訊ねた。

 すると、陽太は自分のズボンのポケットを探り始め、そこから透明な小袋を取り出した。

 その中には、白黒が混じった涙型の粒が入っている。

「――これって、ヒマワリの種、だよね?」

 確認するように問うと、陽太は呆れたように「当たり前でしょ」と溜め息を交えながら答えた。

 いつになく横柄な態度となった陽太に、葵はついムッとしてしまった。

「わ、分かってるよ。一応訊いてみただけじゃん」

「そうなの?」

「そうなの! いちいち訊き返さなくていいから!」

 葵が声を荒らげると、陽太は身体をビクリと反応させた。

「葵」

 そこへ母親がすかさず入ってきた。

「そんなにキツく言うことないでしょう。見なさい? ハル君怖がってるじゃないの」

 母親はそう言うと、陽太の頭を優しく撫でていた。