◆◇◆◇
「葵ちゃーん!」
学校の昇降口を出ようとした時、声変わりのしていない少年の声が葵の耳に飛び込んできた。
葵はその場で足を止めると、ゆっくりと振り返る。
「や……やっと……追い着い……た……」
背中のランドセルを揺らしながら葵の前まで走ってきたのは、幼なじみの陽太(はるた)。
陽太はずっと走りっ放しだったのか、葵に追い着くと、ゼイゼイと何度も肩で息を切らした。
「ああもう! 何やってんの!」
葵は眉間に皺を寄せながら、両手を腰に当てた姿勢で陽太の前に仁王立ちした。
「急に走ったりしちゃダメだって言われてるでしょ? 無理したらまた学校を休まなきゃなんなくなるんだからね!」
「――だって葵ちゃん、僕を置いて先に帰ろうとするから……」
陽太は恨めしげに葵を睨んだ。
そんな視線をまともに向けられると、さすがの葵も何も言えなくなってしまう。
「わ、悪かったよ……」
葵が気まずそうに謝罪を口にすると、陽太はすぐに機嫌を直し、花が咲いたように満面の笑みを浮かべた。
「じゃ、一緒に帰ろ」
陽太は無邪気に言い、葵の手に触れようとしてきたのだが――
「こっ、コラッ!」
あと少し、というところで、葵は慌てて手を後ろに隠した。
「いい加減手を繋ぐのは卒業しようよ。だって、あたしも陽太も来年はもう中学生なんだよ? 恥ずかしいでしょ普通」
「え? 恥ずかしいかな?」
「当たり前だっ!」
小首を傾げながらキョトンとしている陽太に、葵は鋭い突っ込みを入れた。
「葵ちゃーん!」
学校の昇降口を出ようとした時、声変わりのしていない少年の声が葵の耳に飛び込んできた。
葵はその場で足を止めると、ゆっくりと振り返る。
「や……やっと……追い着い……た……」
背中のランドセルを揺らしながら葵の前まで走ってきたのは、幼なじみの陽太(はるた)。
陽太はずっと走りっ放しだったのか、葵に追い着くと、ゼイゼイと何度も肩で息を切らした。
「ああもう! 何やってんの!」
葵は眉間に皺を寄せながら、両手を腰に当てた姿勢で陽太の前に仁王立ちした。
「急に走ったりしちゃダメだって言われてるでしょ? 無理したらまた学校を休まなきゃなんなくなるんだからね!」
「――だって葵ちゃん、僕を置いて先に帰ろうとするから……」
陽太は恨めしげに葵を睨んだ。
そんな視線をまともに向けられると、さすがの葵も何も言えなくなってしまう。
「わ、悪かったよ……」
葵が気まずそうに謝罪を口にすると、陽太はすぐに機嫌を直し、花が咲いたように満面の笑みを浮かべた。
「じゃ、一緒に帰ろ」
陽太は無邪気に言い、葵の手に触れようとしてきたのだが――
「こっ、コラッ!」
あと少し、というところで、葵は慌てて手を後ろに隠した。
「いい加減手を繋ぐのは卒業しようよ。だって、あたしも陽太も来年はもう中学生なんだよ? 恥ずかしいでしょ普通」
「え? 恥ずかしいかな?」
「当たり前だっ!」
小首を傾げながらキョトンとしている陽太に、葵は鋭い突っ込みを入れた。