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 五年の歳月が流れた今も、葵はあの苦い初恋をはっきりと憶えていた。

「まあ、今となってはそれもいい想い出かもね」

 葵はヒマワリに話しかけるように呟く。

 陽太が引っ越してから、しばらくの間は手紙のやり取りをしていた。
 しかし、時が経つにつれ、どちらからともなく手紙が途絶えてしまった。
 やはり、どんなに子供の頃に仲良くしていたとしても、距離という壁はあまりにも大きかった。

 だが、あの頃のような〈淋しい〉とか〈苦しい〉といった感情はなくなっている。

「せめて、来年もこの子達が元気でいるように」

 葵は願いを籠めるように、そっと彼らを撫でた。

[あなただけを見つめる-End]