「葵? 誰かお客さん?」

 声を聴き付けたのか、葵の母親が庭に現れた。

「あ、こんにちは。お邪魔しています」

 陽太母がすかさず葵母に挨拶すると、葵母は「あら」と満面の笑みを浮かべた。

「西山さん、いらっしゃい。ヒマワリを見に来てくれたんですか?」

「ええ。と言っても、お恥ずかしいことに今日までこちらで種を植えていたことを知らずにいたんです。

 葵ちゃんにも言ったのですけど、ウチの陽太がご迷惑をおかけしてしまって……」

「いえいえ、そんなの全く気にしなくていいんですよー」

 葵母はカラカラと笑った。

「お陰さまで私にも楽しみがひとつ増えましたから。それに何より、子供達が本当に嬉しそうでしたもの」

「そうでしたか。なら、安心しました」

 陽太母も、葵母に釣られるように笑顔を見せた。

「さて、それじゃあ写真を撮りましょうか」

 陽太母はカメラを顔の高さまで上げると、「ふたりとも、ヒマワリの前に並びなさい」と促してきた。

「うん! ほら、葵ちゃん!」

「ええー……、絶対撮ってもらわなきゃダメなの……?」

「もちろん!」

 全く乗り気でない葵に、陽太はきっぱりと答えた。

「今日は初めてここにヒマワリが咲いた日なんだから! 一生の記念だよ!」

「んな大袈裟な……」

「つべこべ言わない! ほらっ!」

 いつもは葵の後ろを着いて来てばかりの陽太が、今日は何故か逆にリードを取っている。
 嫌がる葵の腕を強引に引っ張ると、陽太は自分の隣に葵を立たせた。

(もう……、陽太だけで十分でしょ……)

 心の中で不満を言いながら、葵はデジカメを構える陽太母を見つめる。