後は。

「お風呂は……、今日はやめた方が良いわね。それに美加ちゃん、夕飯食べてないでしょう? ありあわせのモノで悪いけど、何か作るからその間に着替えちゃって。あ、隣が寝室だから、使ってね」

「あ、はい。ありがとうございます」

 美加ちゃんが寝室に向かうのを確認してから、キッチンの方に向かい「何を作ろうか? 

 今の時間帯なら、あまり胃に負担がかからないさっぱりしたものが良いよね? 

「うーん」なんて、冷蔵庫を物色しながらメニューを組み立てていると、プルル、プルルと、スカートのポケットに入れてある、スマートフォンの着信音が上がって、ドキッと身を強張らせた。

 でもすぐさま、課長からの電話だと勘が働き、急いで取り出し着信窓に視線を走らせる。

『谷田部課長』

 表示されている名を確認して、すぐに着信ボタンを押して耳に当てた。

「もしもし?」

 何か悪いことでも起こってやしないだろうか?

 まさか、課長までケガをさせられたりしてないよね?

 色々な想像が脳内を暴走し、ドキドキと早まる鼓動を感じながら、恐る恐る返事を待った。

『ああ、高橋さん。谷田部です』

 いつもと変わらない落ち着いた声音に、心底ホッと安堵する。

「課長、今どこにおられるんですか?」

『今は、会社に居るんだ。相手方には、今後二度と同じことが無いようにと厳しく言ってあるから、まずは、問題になることはないだろう。一応、社長にも電話で事情説明をしたから、後は、何も心配しないように佐藤さんに伝えて下さい』