いつまでも、そばにいると、思ってた

「これは使えますか?」

彼女が財布から取り出して
ぼくに別のカードを差し出した。

え……?

これ、初めて見たけど……

超金持ちしか持てない、ブラックカード!

ぼくは彼女からそれを奪い取り
裏表裏表何度もひっくり返して
カードを確かめた。

「これ、使ったことないんですけど……」

「そ、そうなんだ。パパがくれた?」

「はい」

ぼくは焦りを隠して、平静を装った。

この娘、めっちゃお嬢様か!

だからATMの使い方もわからなかったのか………。

「つ、使えると、思うよ」

ぼくのその言葉を聞くと、彼女は嬉しそうに笑って、ブラックカードをATMに入れた。

今度は成功した!

彼女は「やった!」と言って、ぼくに微笑みかけた。

そのかわいい笑顔に、顔が赤くなるのを感じた。

しかし次の瞬間、彼女は怪訝そうな表情でATMの画面を覗き込んだ。

「暗唱番号……」

彼女は小さな声でつぶやいた。

「え?忘れたの?」

「使ったことないから、わからない」

膨らんだ風船がしぼむように、彼女のテンションは一気に下がった。

「パパは知らないの?」

「あ、そうだ」

そう言って彼女はスマホでパパに電話をかけ始めた。

何度もかけ直したが、ついにパパは出ることはなかった。

「暗唱番号わからないとダメですよねー?」

ぼくは小さくうなずいた。

彼女はわかりやすいほど、ガックリ肩を落とした。

「今日はあきらめます。すみません、変なことに巻き込んでしまって」

彼女はすまなさそうに、頭を下げた。

その彼女の姿を見て、ぼくは自分でも驚くような言葉を口にした。

「あの、よかったら、お金貸しましょうか?」