大学の初日は快晴だった。

新入生たちは
これから始まるキャンパスライフを想像してなのか、浮足だった妙なテンションに包まれていた。

ぼくはその中にいることが
なんだかくすぐったく
居心地の悪さを感じていた。

入学式を終えたら
午後は特に何もなかった。

キャンパスの大きな講堂を抜けたところに食堂があり、その隣には大学生協があった。

ぼくはそこで今日は教科書を買い、明日から始まる授業に備えようと思っていた。

優しく伺いを立てるような
柔らかな風がキャンパスを吹き抜け
キャンパス内の並木をゆっくり揺らした。

生協の入り口の10段ほどの階段を軽快に登り切ったところだった。

いきなりだれかが
わたしの右腕をつかんだ。

わたしは驚いて、振り向いた。

そこには1人の女子学生が立っていて、わたしを真剣なまなざしで見つめていた。

知らない人だ。

だれだ……?

肩ぐらいの綺麗な黒髪で
綺麗な人だった。

「助けていただけませんか?」

その口調や彼女の佇まいは
彼女の育ちの良さを感じさせた。

「え?あの……」

突然のことでぼくが言葉を失っていると、彼女はぼくの腕を自分に引き寄せた。