夕方の時間は短い。

小さなキッチンで湯を沸かし
カップ麺に湯を注いで
テーブルに運んでいるときに
外がすでに暗くなっていることに気づいた。

ぼくの部屋は角部屋だ。

ベランダとは反対側の壁
に引っ越しのダンボールを積み上げ、それにもたれながら、ラーメンをすすった。

アパート自体は古いが、国道から入り込んだ道の行き止まりのところに建っていた為、夜は静かだった。

ラーメンをすする音が部屋中に響くほど、静寂に包まれていた。

その時だった。

「キャー!」

若い女の叫び声が
隣の部屋から響いた。

ぼくは驚きのあまり手から箸を落とした。

その後続けざまに
部屋の壁をドンドン叩く音がした。

ぼくは無言で部屋の壁を見つめた。

何事だ……?
怖いお兄さんが女を殴ってるとか?

やっぱり隣の部屋には
ヤバい奴が住んでんのか……?

嫌な想像が頭の中を駆け巡った。

そしてその後は
何事もなかったように静かになった。

深夜まで隣の事が気になったが
それからは叫び声も壁を叩く音も
することはなかった。

ぼくは隣のせいで
寝つきの悪い夜を過ごし
入学式を迎えることになった。

そして数日後、隣の部屋に住む人に
いきなり出会うことになるとは
この時のぼくはまだ知る由もなかった。