大学一年の春は、裸で外に放り出されたみたいに、むき出しで、無責任で、自由だった。

いくつかの志望校は落ちたものの
ぼくはなんとか滑り止めで受けていた地元愛媛の大学に引っかかった。

一年浪人した。

志望大学に絶対受かるんだ、という向上心もハングリーさもないぼくは、これで苦しい受験勉強から解放されるとばかりに喜び勇んで入学した。

そしてキャンパスからバイクで5分のところにワンルームのアパートを借りた。ワンルームと言えば聞こえはいいが、いわゆる六畳一間だ。

2階立ての2階。
ユニットバスで、お世辞にも新しいとは言えないけど、小綺麗にはしてあった。

何にもない部屋に
誰かがゴミ捨て場に捨てていた
正方形の黒いテーブルを部屋の真ん中に置いた。

天板の黒いところが少し色あせていたけど、使うのには問題なかった。

新しい畳の匂いが
ぼくの鼻先をくすぐり
新しい生活が始まることを
告げていた。

玄関の反対側に
半畳ほどのベランダがあった。

雨で錆びた欄干にもたれ
そこから缶コーヒーを飲みながら
沈む夕陽を見た。

夕陽をこうやってただぼんやり
眺めるなんて久しぶりだった。

アパートは少し小高いところにあったから、沈みゆく夕陽が最高に綺麗に見えた。

太陽は色を変え、小さくなり
今日一日がまもなく終わることを告げていた。

ベランダからふと隣を見てみた。

だれか住んでる様子ではあるが
物干しざおや洗濯モノはなく
カーテンは隙間なく厳重に閉められていた。

どんな人が住んでるんだろう……?

うまくは言えないけど
どことなくヤバい雰囲気を感じた。

そして、その予感は的中した。