ドアが開く勢いに押され
ぼくは驚いて後ろズサリした。

ドアの向こうに立っていたのが
見覚えのある顔だったことが
ぼくの思考を停止させた。

そこにいたのは
岩田瑠美だった。

えっ?なんで?
どういうこと?

岩田瑠美の顔は
昼に食事していた時とは違い
恐怖に引きつっているようだった。

彼女もまた驚いていた。

「えっ?ヒロくん?なんで?」

彼女は両手で自分の口を押さえた。

ぼくらは互いに驚いて、顔を見合わせた。

いかつい男からDV受けてる隣の住民って、彼女だったのか……?

ぼくの頭は混乱していて、その場に立ち尽くした。

正気に戻った彼女は「とにかく来て」と言って、ぼくの右手を強引に引っ張った。

「ど、どこに?」

「わたしの部屋」

ぼくが、いかつい男と対峙しなきゃいけないのか……?

殺されないかな?

死にたくないな……

ぼくは玄関にある草履も履かず
彼女に手を引かれるまま外に出た。

彼女は慌てて部屋を飛び出して来たようで、隣の部屋のドアは開いたままになっていた。

やはり彼女は隣に住んでいたんだ……

彼女はぼくの右手を引いたまま
自分の玄関に入った。

彼女はやっとそこで
ぼくの手を離した。

ワンルームの小さな部屋は
玄関から部屋すべてが見えた。

そこから部屋を見だが
誰もいなかった……

どういうこと……?

ぼくが彼女の部屋の玄関に立ち尽くしていると「早く入って」とぼくを促した。

ぼくは慌てて部屋に入った。

ぼくの男の部屋とは違う
女性のいい匂いがした。

部屋も女性らしい飾りが施されていて
綺麗に片付けられていた。

そして彼女はぼくの後ろから
再び突然大声を出した。