昼からは一コマしか授業はなく
家に帰って洗濯機を回した。

ベランダに洗濯物を干し終わった頃、人知れず空にあった太陽は夕陽に変わり、その存在感を見せつけた。

ぼくは缶コーヒーのプルタブを開け、欄干に持たれかかりながら夕陽を眺めた。

少し小高いベランダから夕陽は、絶景だった。

空は太陽を中心に茜色の波紋を広げているようだった。

また夕陽はその日の気候や時間によって、その表情を変えた。

コーヒーをちびちび飲みながら
ぼんやりと夕陽を眺めるのが
自分にとって最高にくつろぐ時間になっていた。

隣が気になってふと覗くと
外界からの干渉をほんの少しも許さないほど、やはりカーテンはガッチリ閉められていた。

そんな時だった。

再び隣から「キャー！」という叫び声が聞こえてきた。

いつもは夜なのに
今日は珍しく夕方だ。

もう一度ベランダから隣を覗き込んだが、やはり見えなかった。

女性の叫び声はいつになっても慣れるなんてことはなく、ぼくの気持ちを不安にさせた。

その後、やはりいつものパターンで
ドンドンドンという激しく床を叩く音が響いてきた。

ぼくはベランダの窓を閉め、部屋に戻った。

次の瞬間、ぼくの部屋の玄関のドアが、さきほどと同じリズムで、ドンドンドンとけたたましく叩かれた。

えっ！なんで？

うちの家？

心拍数が急激に上昇するのを感じた。

いかつい男に殴られてるオンナが
ぼくに助けを求めて来たのか？

いや無理無理！
殺されちゃうよ！
違う部屋に助けを求めてくれよ！

ぼくは無言で玄関のドアを見つめた。
ドアは再びドンドンドンと叩かれた。

出たらダメだ。
居留守を使おう。
余計なことに巻き込まれたくない。

そこで大事なことに気づいた。

あ、ヤバい！
ドアに鍵かけてなかった！

ぼくは急いでドアに向かった。

ドアの前に来たその瞬間、
ぼくの部屋のドアが外から勢いよく
何者かによって開けられた。

遅かった……