いつまでも、そばにいると、思ってた

「いや、いいんだけど……」

「わたしマジメに聞いてるんですよ!」

彼女は少し怒った口調でそう言った。

「ごめんごめん、えっと、将来の夢は……」

「はい」

ぼくはそこでスタミナセットの焼肉を口に頬張って、答えるのをわざとじらした。

「ふつうそこで口に入れます?」

彼女は呆れた口調でそう言った。
少し怒った彼女は可愛らしく見えた。

食べ物をわざとらしく飲み込んで話を続けた。

「あの、一人暮らし?」

「わたし?一人暮らしですよ」

「そうなんだ。どんなところ?お嬢様だからいいところだろうね〜」

「普通のアパートです!それにお嬢様とかじゃありません!」

彼女の怒りのボルテージが上がって行き、からかうことに可笑しさを感じていた。

「うちの隣にさ、変な人住んでてさ、毎晩夜中に『キャー』って叫ぶんだよ、怖くない?」

「怖いですけど!なんの話ですか?」

そのツッコミにぼくは笑い出した。

「わたしの質問聴いてました?ヒロくんの将来の夢!」

ぼくはわざとらしく「あー、そうそう!ごめんごめん。ぼくの夢はね……」と言って、再びご飯を口にかきこんだ。

彼女はいっそう尖った口調になり「わたしのこと、バカにしてます?」と握っていた箸をトレイの上に置いた。

その表情にぼくは噴き出して笑いそうになるのを、必死にこらえた。

「ぼくの夢はね……」