昼休みになり
ぼくとATMの彼女は
大学の食堂にいた。
お金を貸してもらったお礼に
どうしてもご馳走したいと言うのだ。
ぼくは必要ないと断ったが
彼女がどうしてもというので
学食ならということで折り合いがついた。
昼時の学食はごった返していた。
最初に機械で食券を買うのだが
機械の前にはすでに長い列ができていた。
落ち着きのない高校を卒業して間もない男子が
列に並びながらジャレあっていた。
学生の女の子はみんなズボンをはいていたが、彼女は今日もスカートを履いていて、周りから少し浮いて見えた。
ぼくの前に並んでいた彼女は
突然ぼくのほうに向きなおった。
「あの、まだ名前言ってなかったですよね、すみません!昨日はなんかパニックになってたから」
「いやいや……」
身長150センチくらいの小さな彼女は
まっすぐにぼくを見上げて言った。
「岩田です。岩田瑠未です。」
「いわたるみさん……」
「はい、そうです!」
「ぼくは河本。河本浩輝」
「こうもとひろきさん?」
彼女はぼくの名前を聞いて、嬉しそうに笑った。
「えっ?何か?」
「いえいえ、別に」
彼女はそう否定しながらも
なおも嬉しそうに笑った。
「ヒロくん、だね?」
「男はみんなヒロって呼ぶし、女子は河本くんだけど……」
「じゃあ、わたしはヒロくんって呼ぶね」
笑顔でぼくの名前を呼ばれることが
どことなく、恥ずかしくってくすぐったかった。
「ヒロくんは何学部?」
「教育学部」
それを聞くと彼女は驚いて
「えーっ!」と大声を出した。
その声は賑わっていた食堂に響き渡り
みんなが彼女のほうに振り向いた。
彼女は自分でも想像以上に大きな声が出たことに驚いたのか
自分の口を慌てて両手でふさいだ。
「わ、わたしも!わたしも!」
彼女は興奮していた。
「わたしは教育学部って言っても、美術コースなんだけどね」
「そうなんだ」
急激に上がった彼女のテンションに
ぼくは取り残されていた。
「すごい偶然だよね、すごいと思わない?」
興奮冷めやらぬ彼女に
ぼくは無言で前方を指差した。
食券機で食券を買う順番が来ていたのだ。
ぼくとATMの彼女は
大学の食堂にいた。
お金を貸してもらったお礼に
どうしてもご馳走したいと言うのだ。
ぼくは必要ないと断ったが
彼女がどうしてもというので
学食ならということで折り合いがついた。
昼時の学食はごった返していた。
最初に機械で食券を買うのだが
機械の前にはすでに長い列ができていた。
落ち着きのない高校を卒業して間もない男子が
列に並びながらジャレあっていた。
学生の女の子はみんなズボンをはいていたが、彼女は今日もスカートを履いていて、周りから少し浮いて見えた。
ぼくの前に並んでいた彼女は
突然ぼくのほうに向きなおった。
「あの、まだ名前言ってなかったですよね、すみません!昨日はなんかパニックになってたから」
「いやいや……」
身長150センチくらいの小さな彼女は
まっすぐにぼくを見上げて言った。
「岩田です。岩田瑠未です。」
「いわたるみさん……」
「はい、そうです!」
「ぼくは河本。河本浩輝」
「こうもとひろきさん?」
彼女はぼくの名前を聞いて、嬉しそうに笑った。
「えっ?何か?」
「いえいえ、別に」
彼女はそう否定しながらも
なおも嬉しそうに笑った。
「ヒロくん、だね?」
「男はみんなヒロって呼ぶし、女子は河本くんだけど……」
「じゃあ、わたしはヒロくんって呼ぶね」
笑顔でぼくの名前を呼ばれることが
どことなく、恥ずかしくってくすぐったかった。
「ヒロくんは何学部?」
「教育学部」
それを聞くと彼女は驚いて
「えーっ!」と大声を出した。
その声は賑わっていた食堂に響き渡り
みんなが彼女のほうに振り向いた。
彼女は自分でも想像以上に大きな声が出たことに驚いたのか
自分の口を慌てて両手でふさいだ。
「わ、わたしも!わたしも!」
彼女は興奮していた。
「わたしは教育学部って言っても、美術コースなんだけどね」
「そうなんだ」
急激に上がった彼女のテンションに
ぼくは取り残されていた。
「すごい偶然だよね、すごいと思わない?」
興奮冷めやらぬ彼女に
ぼくは無言で前方を指差した。
食券機で食券を買う順番が来ていたのだ。
