いつまでも、そばにいると、思ってた

「あ、でも、あったっけ?」

ぼくはポケットから財布を取り出し
彼女に背を向けて財布の中身を確認した。

なんとか、足りるかな……?

「だ、大丈夫」

自分が言い出したことをこの瞬間、少し後悔した。

「いいんですか?ありがとうございます!」

そう言いながら彼女は頭を深々と下げた。

「いくらくらいいるの?」

「さあ……5万円くらい?」

ヤバい!金ない!

いや、あると言えばある。
ちょうど5万円。

ぼくの教科書代が2万ちょっとだから、足りると踏んでしまった。

この5万渡しちゃうと、自分の教科書が買うお金がなくなってしまう。

銀行預金もぜんぜんないし……

どうしよう……

彼女は期待に満ちた目で、ぼくを見ていた。

この状況、引くに引けない……

仕方なくぼくは財布から5万円を抜き取り、彼女に差し出した。

見知らぬ人で、本当に返してくれるかわからない、そんな人にぼくにとっては全財産に近いお金を貸すなんて、本来ならあり得ないことだった。

でも不思議なことに、彼女の余分な物をすべて削ぎ落としたような、まっすぐで純粋な瞳は、ぼくを裏切らない気がした。

彼女は5万円を両手で丁寧に受け取り
再び大きく頭を下げた。

「ありがとうございます!必ずお返しします!」

そしてぼくらはライン交換して、ぼくはその場から立ち去った。