バレー部の朝練を見に行こうかと思ったけれど、丁度登校してきた田村さな……さなちゃんが私の机のところまでやってきてお喋りに突入してしまって結局行けなかった。

でも、どんな顔をして彼に会えばいいのか正直分からなかったし、丁度良かったのかもしれないと思いなおした。

さなちゃんとは、東条くんと同様1年生の時に同じクラスになった一人で、同じ中学の子とは離れてしまった私に、元気に話しかけてきてくれた彼女とは、今では一番の仲良しだ。

そして、私の片想いを知るたった一人の人だ。

仲のいい彼女にも、東条くんに告白されたことは、まだ話せていない。

だって、自分でも未だに夢だったかもしれないと思っているのに。

勘違いだったら、恥ずかしすぎる。

そんなことを色々と考えていたら、さなちゃんにも言えなかった。

でも、話したい。

好きな人に好きだと言われるって、すごく幸せで嬉しいことだし、さなちゃんなら、きっと一緒に喜んでくれるって思うから。


「ほたる、ほら見て。東条くん来たよ」


さなちゃんの方を見て喋っていた私に、彼女が視線で彼が来たことを教えてくれた。

途端、騒ぎ出す心臓がうるさい。

どうしよう。え、と、そうだ、挨拶……。「おはよう」って言わなきゃ。

ゆっくり振り返って、彼の姿を探した。

席は、隣の隣。

すぐ近くだから、きっと東条くんから声をかけてくれるはず。

そう、いつものように、私の好きなあの少し高めのよく通る声で。

『結城、おはよう』って。

その声を待って、でも、待てども声は聞こえないし、探していた彼はいつの間にか自分の席に座って、同じバレー部の男子と楽しそうに話していた


あ、れ?


いつもと違う彼の行動に違和感は沸いたけれど、朝練でへとへとになっている日は机でへばっている日もあったし、兄弟喧嘩をしたと言って不機嫌だった日も、自分の席でふて寝をしていることだってあった。

だから、別にイレギュラーなことなんてない……はずなのに。