いつもより早く目が覚めた私は、未だ夢か現かと昨日の事を思い出しながら、部屋の机の中から、ラミネートされた1枚の写真を取り出す。
東条くんと同じ中学だった友達から、譲ってもらったものだ。
修学旅行で撮られたものらしく、彼は2人の男子生徒と肩を組んで笑顔で写っている。
幼さの残る彼の表情は、気の置けない友人達との旅行にとても楽しそうだ。
「可愛いなぁ……」
この写真を見るたび、自然と顔が笑ってしまう。
普段見る彼とは違う。なんだか、自然体の姿が可愛くて仕方ない。
でも、この写真を私が持っていることは秘密。
バレてしまったら、きっと、気持ち悪いって思われるに違いないから。
でも……、私の事を好きだって言ってくれた今なら、私がこの写真を持っていたとしても……。
もしかしたら、笑って許してくれないかな?
「ほたる~、朝ご飯できてるよ」
階下から響く母の声に、勢いよく返事をする。
写真を元の場所にしまってから、私はリビングへ降りて、私を呼んだ母や、新聞を読みながらこちらに視線を向けた父、今年の春中学生になった弟の倫(りん)に挨拶をした。
リビングのテーブルには、毎朝のテンプレート、トーストにハムエッグに生野菜のサラダが4人分並んでいる。
戸棚から自分のマグカップを取り出してコーヒーを注ぐ。
いつも通りの朝だった。
でも、いつもとは違う朝。
「ほたる、何ニヤニヤしてんの?キモイ」
「んー?別に」
「別にって、絶対違う。なんかあったんだろ?」
突っ込んで聞いてくる倫を無視してコーヒーを飲む。
高校2年になる頃から、なんとなく飲めるようになったブラック。
今日はなんだか甘くも感じる。