私は不満を心の中で爆発させている最中に、ふと思った。もしかしたら、友達である好美が私を可哀想に思い、手伝ってくれるのではないかと。
友達と一緒であれば、面倒な作業も比較的楽しく行える。
私は期待をしながら横にいる好美の方を向き、声をかけようとするといきなり好美は「無理だよ」と言った。
「え?」
まだ何も言っていませんけど?
「どうせ苺のことだから、一緒に手伝ってくれないかなーとか思ってんでしょ?」
「う……」
私の心の中を完全に読み取っている。流石だ。
「大丈夫ですよ好美さん。手伝いは私が絶対に許可しませんから。全て島川さん一人にやらせる予定です」
先生は白い歯を見せながら、言った。
……ひ、一人⁈
私は耳を疑う。
「先生、一人ってどういうことですか! 他にも図書委員は沢山いるでしょ‼」
「あなたは何度も図書委員を休みましたよね? だから、その罰です。本棚の整理、よろしくお願いしますね」
先生はそう言って私の肩を叩き、去っていった。
「そんな……。大人数でやっても厳しいのに、一人でなんて絶対無理だよぉ……」
私はそう弱音を吐き、チラッともう一度好美の方を見た。
もしかすると、先ほどはやらないと言っていたけど、今は気が変わり手伝ってくれるかもしれないと思ったからだ。
「まあ一人では厳しいだろうね。でもサボりまくってたんだからしょうがないね。……じゃあ私帰るわ。また明日ね」
好美はそう言って下駄箱から靴を取り出し、それを履いて去っていく。
あっ、これガチで帰るパターンだ。
「――ちょ、ちょっと好美待って」
慌てて声を掛けたが、その時にはもう好美は結構遠くまで行っていて、私の声に反応して振り向くことはなかった。
私は現実の厳しさを知る。同時に友達の無情さも知った。
……まあでも先生の言う通り、ずっと委員会のことを忘れていて、出席していなかったのは事実だ。……仕方がないことかも知れない。
私は図書室に向かって、渋々と歩き出した。