放課後。
私は好美と一緒に下駄箱まで向かっていたところ、突然後ろから声を掛けられた。振り向くと、担任の先生がニコリと笑ってそこにはいた。
「先生、どうしたんですか?」
私は言った。
「分からないのかい?」
先生は笑顔を崩さないまま言う。ちょっと怖い。
思い当たる節を考えてみたが、考えても、私は先生に引き止められる理由が分からなかった。
……なんだろう?
「すみません、分かりません」
「あはは、そうなんだ。……島川さんは委員会って言葉を知ってる?」
「あ――っ!」
先生が私を引き留めたわけを理解した。そうか、私は図書委員だった。もうこれで忘れたのは何度目だろう?
先生は素っ頓狂な声を出した私を見て、ニコニコしている。この先生は笑顔のときほど、機嫌が悪いことの方が多いため、騙されちゃいけない。
「先生、私は委員会の仕事を忘れていました。本当にすみません。二度と同じ過ちを繰り返しません。どうか許してください!」
「うん、許してあげる。……でもね、その代わり条件があるの」
私は喉を鳴らした。「じ、条件は何ですか?」
「本って本棚から出して読み、また本棚に戻すでしょ? 当たり前のことだけど」
「はい」
「どうしてかは分からないけど、大抵の人が、ちゃんと本を同じところに戻してくれないの。だから名前順の配列がぐちゃぐちゃになっちゃうの。そう言うのって困るよねえ」
先生はそう言い、不敵な笑みを浮かべた。嫌な予感しかしない。
「……つ、つまり私がすることって」
「本棚の本を全て名前順に並べ替える作業をすることが、あなたを許す条件です」
「ぎゃぁあああああああああ‼」
条件厳しすぎる!
何万冊もある本を全部名前順にしろってか! 何時間かかると思ってんだ!