「好美は夢を見なさすぎだよ。世の中もっと楽しく考えて生きた方が楽しくない?」


「夢を見るのはいいけど、それだけだと彼氏は出来ないよ。前に言っていたけど、苺は彼氏を作りたいんでしょ?」

「う、うん」

「だったら、もっと現実的に考えなきゃ駄目だよ」

好美はそう言って、箸を収納ケースに閉まって、弁当の蓋を閉じた。食べ終わったみたいだ。

好美は食べるペースが速い。まるで食料を口で噛まずにそのまま飲み込んでいるのではないかと疑ってしまう程のスピードだ。

現実的ね……。

私は恋愛をまったく知らないから、夢見がちな考えになってしまうのかも知れない。

だけど、少ない確率かも知れないけど、ドラマのような素晴らしい恋愛が、とてもかっこいい男の人と出来るかも知れないと、私はどうしても頭の中でそんなことを思ってしまう。

「ドラマ見たいな恋愛は出来ないものなのかな……」

私はボソッと呟く。独り言のつもりだった。

「苺はどうして恋愛ドラマでは素敵な展開が起こりやすいか、分かる?」

私の独り言に好美は反応した。

「分からない。何で?」

「現実では起こらなく不満に思っている部分を、架空の世界で補うためだよ」好美は人差し指を立てた。「つまり現実では起こらないってこと」

「うわっ、……本当に夢も希望もないことを言うね好美は」

なんだか私は少し悲しくなった。

でも、高校生は、それくらい構えたように生きていくのが普通なのかもしれない。……私が楽観的過ぎるのかな?