お昼ご飯の時間。

私、島川苺(しまかわ いちご)は、クラス内で唯一仲がいい好美(よしみ)と机を突っつけ、持参したお弁当を食べていた。

「私さ、白馬に乗った王子様が私を迎えに来たらいいなーって、高校生になってからも時々思ってしまうんだけど、ヤバいかな?」
 
私は自分がよくする妄想を、前にいる好美に言った。軽い口調で言ってみたが、結構恥ずかしい。

「うん、やばい。超やばい。現実を見た方がいいよ。白馬の王子様が迎えに来ることは、絶対に無いから」

好美は私に箸の先を向け、そう言った。
私はムッとする。
 
「……でも、絶対無いとは限らないと思うんだけど」

「ううん、無いね。……周りを見渡してごらん。教室内に男はいるけど、王子様はいないし、そもそもイケメンがいないだろう」

まあ、確かにそれは言えてる。私は教室内を嫌々見渡してそう思う。

……でも。

「いや、あのね。私が言いたいのは、この学校にいる人じゃなくて、見知らぬ王子様が白馬で学校に来るかも知れないってことなんだけど……」

私はそう言ってから、箸でミートボールを掴み、口の中に入れて噛んだ。ふんわりとした食感が口の中に広がる。

「それこそ確実にないね。……考えても見てごらん。いくら白馬の王子様だとしても、部外者は学校に入った時点で、先生や警備の人にとっ捕まる。だから苺の前にはこれない」

「なるほど」

「納得した? 彼氏が欲しいなら、そういう変な妄想癖な所を直していかないと、厳しいと思うよ。恋愛は妥協が重要だからね」

好美は何ともなさそうに、夢のない話をした。