俺は柄にもなく、怒りに任せて天形の胸倉を掴んだ。
 だが、その瞬間に俺は周りの視線を独り占めした。

 ここは天形が通う、不良校。
 分が悪い。

 俺はおとなしく手を離す。

「……場所、変えるか」

 俺は黙って天形についていく。
 連れてこられたのは、何もない公園のようなところだった。

 そこでは小学生くらいの男の子たちがサッカーをしていて、一人が取り損ねたボールが転がって来た。
 天形はそれを足で真上に蹴り上げると、二、三回リフティングをしてタイミングを掴み、少年たちのほうに蹴った。

 まるで吸い込まれるかのように少年のもとにボールは届き、歓声が上がった。

「サッカー、できたんだな」
「小学生のときやってたくらいだ」
「なんで中学でサッカー部に入らなかったんだ?」
「単純にレベルが低くて入る気なくしただけ」

 何様だ、と思ったけど、何年もやってなくてもあれだけの腕前なら、まだ続けていたらもっと上手くなっていたんだろう。

「……そんなふうに、ひなたのことも切り捨てたのか」
「は?」

 自分でも意味不明なことを言っていることはわかっているが、頭が回らず、感情で話すしかないこの状態で、いい言い方なんて見つけられるわけなかった。

「告白したくせに別れを切り出したのは、ひなたが思ったような子じゃなかったからかって聞いてんだよ」