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 文化祭の閉幕を告げるアナウンスが鳴った。

 そして、残っていた最後のお客さんのお会計が終わって、店内にこのクラスの生徒しかいなくなった瞬間、教室中に歓喜の声が上がった。大きなトラブルもなく、無事に盛況のまま終わった喜びで、みんなは浮かれ騒いでいる。売り上げがいくらだとか、打ち上げはどうしようかとか、そんな話題で持ちきりだ。

 そのにぎやかな空気の中に、青葉と加瀬くんはいない。きっと今頃、青葉は後処理に追われ、加瀬くんは弓道部の方で同じように盛り上がっているはずだ。それが仕方ないことだとは分かっているけど、やっぱり寂しい気持ちはある。

 この日のために他のクラスメイトよりも頑張って準備に取り組んできた自信ならあったけど、素直に喜びの輪の中に入り切れずにいた。

「お疲れ様。今回は大活躍だったな」

 紙コップを二つ手にした山本くんが隣に立って、その片方を僕に差し出した。コップの中身は、喫茶店の余りのコーヒーだった。僕はそれを受け取って、

「ありがとう。山本くんもお疲れ様」
「どうにか乗り切れてよかったな。他のクラスのやつからも結構評判良かったし」
「だね。ようやくこれで一安心かな」
「けど、せっかくこれからキャンプファイヤーだっていうのに、西峰さんがいなくて残念だな」

 文化祭の夜は、出し物の片づけを終えた後にキャンプファイヤーが行われるのが恒例だった。去年も一昨年も、クラスメイトたちの輪の端っこで、冷めた気持ちでそれを見ていたことは覚えている。

 今年こそ、去年までと違う形でそれを見られるんじゃないか。と、わずかにそんな期待をする気持ちもあった。だけど――

「仕方ないよ。青葉にはもっと大事な仕事があるんだから」
「まあそうだよなあ……」と、山本くんは急に首を傾げて、「あれ? でも確か、後夜祭って有志が勝手にやってるんじゃなかったっけ?」
「そうなの? でも、だからって別にどうにもならないよ」

 青葉と二人で文化祭を堪能するなんて、今日のあのわずかな時間だけで充分だ。部活のみんなとも結局ほとんど話もできていなかったけど、そんなわがままばかりも言っていられない。

 そんなことを思った時、スマホが短く振動するのを感じた。

 差出人を勝手に予想して期待してしまう気持ちを落ち着けつつ、スマホの画面を開く。通知が来ていたのは青春部のグループで、差出人は加瀬くんだ。
肝心の内容は、キャンプファイヤーの時間に旧校舎に集合しろ、というものだった。