翌日の放課後、教室の前の廊下で僕は青葉を待っていた。

 毎日のように生徒会の仕事に追われていた青葉が、珍しく今日は活動がないと話をしていて、それなら、と久しぶりに一緒に帰る約束をしたのは朝のことだ。

 やがて、帰宅を急ぐクラスメイトに紛れて教室を出てきた青葉は、すまなそうな顔だった。

「ごめん、やっぱり今日も帰れなくなっちゃった」
「いいよ。生徒会でしょ?」
「うん。この時期はどうしても仕事が山積みで……」
「一年の一大イベントだもん。しょうがないよ」
「ありがとう。行ってくる」と、言うや否や慌ただしく去っていく青葉の背中を見送る。

 ここ最近の青葉はずっとこんな調子だ。文化祭関係の仕事に追われているみたいで、毎日完全下校時刻のギリギリまで生徒会に打ち込んでいる様子だった。朝早くから学校に行くことも珍しくなくて、ずっとすれ違いのような日々が続いていた。

 こんなに忙しくて、勉強する時間あるのかな?

 ふと青葉のことが心配になる。どれだけ超人のような才能と体力を秘めた彼女でも、さすがにこの忙しさは負担になっているんじゃないか、という心配が頭をかすめた。

 でも、とすぐに思い直す。さっきの青葉の顔に、疲れの色はなかった。今日の授業中、先生に問題を当てられた時だって、それが難問だったのにもかかわらず、あっさりと答えて教室を沸かせていた。

 やっぱり、青葉ならこの程度余裕なんだ。僕みたいな凡人と同じはかりで測れるはずがない。

 早く帰って勉強をしよう。そう思った時、スマホの震える感覚があった。短いバイブレーションは、メールの通知だ。

 ポケットから取り出して画面を見ると、差出人は赤川さんだった。

『今から部室!』