空に浮かんでいた太陽は数刻ほど前に沈み切り、それに替わるように、欠けた月といくつもの星々が鈍い光を放って浮かんでいる。

 そのかすかな空からの光と近くの家々の明かりに照らされて、一つの学校がわずかに見える。

 下校時刻もとっくに過ぎたその時間、まだ真新しい様子のその校舎は、昼間のにぎやかさを忘れてしまったかのように静まり返っている。教師たちも全員が帰宅したのか、そこには人の気配の一つもない。

 静けさに満ちた学校の校舎からは、言いようのない不気味ささえ漂っているように感じられる。

 ――が、その隣。

 真新しい校舎とは対照に、年代を感じさせるような古びた校舎がもう一棟。

 窓枠の辺りには蜘蛛の巣が張られ、校舎を骨格するコンクリートにはひびが入っていて、日常的に使われている様子はない。

 本来なら人が寄り付くはずもないそんな校舎の窓から、いくつかの人影が覗いて見えた。廊下の端から端へと、駆けるように移動するその影の数は、全部で五つ。

 廊下を駆けるその影は、まるで踊っているかのようにさえ見える。

 古ぼけたその校舎から、若い男女の楽しげな声が響く。

 広い学校の敷地には彼らの他に誰もいなくて、その声が誰かに届くことはない。

 どこまでもにぎやかなその声は、どこか青春を謳う歌声のようにも聞こえた。