しばらく、市川さんはやっぱり困惑していた。


……でも、その間も律は真っ直ぐに、真剣な表情で市川さんのことを見つめていたから。


律の気持ちが、市川さんにも届いたようでーー



「……分かったわよ」

そう言った後、小さく呟くように、でも確かに……


「……私もごめん」

と、律に伝えたのだった。



まだ、どこかぎこちない。
でも、律は市川さんに対して、確かに笑った。
すぐには友達にはなれないかもしれない。
だけど、友達になれる可能性がグンと高くなった気がした。



そんなことを考えながら二人のことを見ていると、市川さんとバチッと視線が合った。

〝何、こっち見てにやけてんのよ!〟とか大声で言われそう、とか思っていたら、露骨に視線も顔も逸らされてしまった。

そんなに俺のことが嫌いか?

俺だって、市川さんのこと特別好きとかじゃないけど、でも別に嫌いって訳でも……そう思うと、このあからさまな無視はちょっと傷付く。



「……怒ってる?」

さりげなく言ってみるけれど、市川さんは目を逸らしたまま何も答えない。


「……無視はやめてくれない?」

「……」

「そんなに俺のこと嫌い?」

「……」

「……あれ? 何か顔赤くない? どうした?」

「あっ、赤くなんかないわよ! 馬鹿!」


また馬鹿って言われた! 何でだよ⁉︎