弁当を食べていると、不意にコーヤがこんなことを言い出す。

「そういえば、永倉さんだっけ? 声の出ない子」

急に律のことが話題に上がり、思わずドキリとする。

「達樹はあの子と中学一緒だったんだよな?」

「あ、まあ……」

「いつも一人でお昼食べてるよね。なんか心配になるなあー」

そう言ってコーヤは、自分の席で一人静かに弁当を食べている律へ視線を向けた。


俺も、コーヤに釣られたフリをして律を見る。



律が一人で弁当を食ってるなんて、不思議な感じだ。
中学時代、律の周りにはいつもたくさんの友人がいた。飯時なんて、律と一緒に飯を食う為に、複数のグループが律を奪い合うことだってあったのに。


「やっぱり、喋れないと友だちも作りにくいのかなぁー」

コーヤの言葉に、俺は「そうかもな……」と小さな声で返事をするので精一杯だった。

すると。


「ねぇ、俺らの席に呼ぼうか?」

コーヤが突然そんなことを言い出すから、俺の心臓はまたドキンと音を立てる。

律を? ここに呼んで一緒に飯を食う?


動揺はしたけど、勿論嫌という訳ではなかった。
俺だって、律が一人で弁当を食ってる姿なんて見たい訳じゃない。


「コ、コーヤがそうしたいなら、俺は別にいいけど」

何でもないようなフリをして、そしてさりげなくコーヤのせいにしつつ、俺はそう答えた。


しかし。


「やめといた方がいいんじゃないか?」

席から立ち上がろうとしたコーヤを、尚也が静かな声で止めた。