「……じゃ、俺も食器洗いしよ」

ジャージの腕を捲り、律の隣に立った。


《し、しなくていい。皆と花火してきなさいよ》

「別に、是が非でも花火やりたかった訳じゃねーし。それに……」


……それに続く言葉は、恥ずかしくて上手く言葉には出来なくて。


だから、テレパシーで伝えた。


《それに、お前がいないとつまらない》



お互いに無言の、変な間が流れる。この場には、蛇口から流れる水音だけが聞こえる。


ヤバい。気持ち悪いとか思われてたらどうしようか。

と、内心焦っていると、律からのテレパシーが聞こえてくる。



《……ありがとう》



……どういたしまして、と素っ気なく答えたけれど、その言葉に安心したし、嬉しかった。



その後、今日俺が切った野菜はやっぱりでかかったとか、今日の昼間に解いた問題が難しかったとか、そんなたわいもない話をしながら二人でクラス全員分の食器を洗った。

少し疲れたけれど、律と二人でテレパシーで色んな話をしながら過ごした時間はとても楽しかった。



「部屋、戻る?」

《そうね》

食器を棚に戻してから、流し台の電気を消し、二人でロビーに出た。



するとその時。



「あれ。何してんの、二人で」

薄暗いロビーからこっちへ向かってやって来たのは、市川さんだった。