「押し付けられたって、誰に?」

《……市川さん》

「え?」

予想外の名前が飛び出してきて、俺はますます目を丸くさせた。


《最近仲良くしてくれてるな~、なんて思ってたけど、私の勘違いだったみたい。
カレー食べ終わって女子部屋に戻ったら、市川さんの提案で皆で花火しようって話になったんだけど、今日はうちのクラスで食器を洗う当番でしょ。だから、皆で花火してくるから私に食器洗っとけってこっそり言ってきたのよ》

「は、はあ⁉︎ 何でそんなこと……!」

《さあ。理由なんて知らないけど、単純に私のことが気に入らないんじゃない? ちなみに、一組がキャンプ場の方の洗い場使ってるから、二組はここの洗い場を使うことになってるの》

「そんなことはどーでもいいんだよ! ていうか、何で言いなりになってんだよ! お前はそんな命令を大人しく聞くような奴じゃないだろ!」

《大人しくいじめられてるつもりなんてないわよ。全部片付けた後、先生にしっかりチクりにいくわ。
……だけど、私はやっぱり誰とも仲良くなれないんだなって思ったら、花火なんかどうでも良くなったんだもの》


……そう話す律は、決して泣きそうな様子はなかったけど、強がっているようにしか見えなかった。