キャンプ中の食事は基本的に自炊だけれど、その日のお昼に限っては、学校側が用意していた弁当を各自の宿泊部屋でそれぞれ食べた。


午後は、学習部屋の説明会と、実際にそこを使用しての自主学習。まあ、友人同士で雑談したり、こっそり持ち込んだ漫画を読んだりしている人もいたけれど。


そして夕方は、外のキャンプ場を使って、班ごとにカレー作りだった。

勉強は好きではないけれど、キャンプ場での自炊はいかにもアウトドアって感じで、楽しいしテンションが上がった。

カレーを作っている間も、班でそのカレーを食ってる時も、市川さんと村田さんは律にたくさん話し掛けていて、律も言葉こそ出せないものの嬉しそうにしていたので、それを見て俺も安心した。



夕食後は、各自部屋に戻った。

食器の後片付け等は、今日は一組と二組が担当。
俺達は二組だけど、洗い場が少ない関係で、食器の後片付けは女子がしてくれることになった。
悪いなと思うが、その代わり、行事で使う重い荷物は男子が全て持ち運ぶことになっている。



「律、ちゃんとやってるかなー……」

敷き終わった布団の上で思わずそう呟くと、コーヤから「はい、お母さん発言」とツッコミを受け、ハッとする。


「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。市川さんと村田さん、ちゃんと仲良くやってくれてたじゃん。正直、ちょっと意外だったけど」

「まあな。それには安心した」

「そういえば尚也、市川さんから何か言われたり誘われたりしたー?」

コーヤに話を振られた尚也は、形の良い二重の瞳をパチパチと瞬きさせ、


「言われる? 誘われる? 何の話だ?」

と答える。
市川さんは、食事の時や班行動の時に、分かりやすい程に尚也にアピールしていたけれど、残念ながら届いていなかったらしい。
尚也は女子からモテるが、当の本人はそういうことには鈍感で、さほど恋愛に興味もなさそうだ。



そんな会話をしていると、部屋の戸を誰かがノックしてきた。

点呼にはまだ早い。誰だろう?


「どうぞぉ」とコーヤが代表して答えると、扉が控えめに開き、そこから顔を出したのは、クラスの女子数名だった。


「ねぇ、外で花火しない? 市川さんたちが持ってきたみたいなの」

と誘ってきた。


それを聞いて、テンションを上げる男子達。
コーヤと尚也も「楽しそう」と言っている。


花火か。
確かに、せっかくのキャンプなんだし、皆でこういうことして思い出作らないと勿体無いよな!
先生にバレたらすっごい怒られるだろうけど、気にしないことにしよう。