「律」
と声を掛けながら、近付く。

「何か困ったことないか? 何かあればすぐに言えよ。あ、男子部屋に来てもいいし。そうだ、忘れ物とかしてないか? 今なら貸せるぞ」


俺がそう言うと、律は右手を軽く挙げてにこっと笑った。
多分「大丈夫」と言っているのだろうけど、その顔が何だか少し困っているように見えるのは気のせいか?


「達樹。永倉さん困らせちゃ駄目っしょ」

コーヤに言われ、俺は真剣に「え?」と驚いてしまう。


「こ、困らせてる?」

「心配が度を過ぎてるというか。何か、心配性で過保護なお母さんみたい」

「おかッ……⁉︎」


お母さんってことはないだろ! と思ったものの、律も笑いながらコク、と頷いた。

え、律もそう思ってるってことか⁉︎



「べ、別に俺はそんなつもり……。だって、何かあったら心配だろ」

「それは分かるけど、ちょっと極端っていうか」


極端。
そう、なのかな。
言われるほど極端じゃないとは思うけど、相手が女子だからそう見えてしまうっていうのはあるかも……。

同性同士なら仲良く話していても目立たないけれど、異性同士だと、変に目立つのかもしれない。


すると、コーヤの隣にいた尚也が落ち着いた笑顔で口を開く。

「まあ、達樹の気持ちは分かるけどな。心配するっていうのは大事なことだよ。ハンデがある人をあんまり特別扱いするのはどうかっていう意見もあると思うけど、それでも、永倉さんが俺らよりも日常生活が大変なのは事実だからな。色々助けてあげたいとは俺も思う」

「だ、だよな?」

「でも、過保護になる必要はないよ。永倉さんの今後のことを考えたら、仲の良い女子を作った方がいいと思うし」