教室内が若干ざわつくが、担任は続ける。

「中二の冬に、喉に悪性の腫瘍が出来、手術で声帯ごと摘出した為に、声が出せなくなったんだ」


日常生活で彼女が困っていたらぜひ皆で助けてあげてほしい、担任がそう言うと、律は無表情のまま小さく頭を下げ、着席した。


クラスの空気はまだ少し揺れていたが、次の人の自己紹介が始まるとすぐに再び静まりかえった。



密かに律に視線を向けると、無表情で俯いたまま、律も他の人の自己紹介は聞いていないように見えた。



俺も、再び窓の外に視線を戻した。