「ちょうど律もいないんだし、このまま穏便に済まそうぜ」

俺がそう言うと、コーヤはまだ納得いかなそうな顔はしていたが、とりあえず市川さんに詰め寄るのはやめた。


「ふーん。そっちの黒髪は話が分かるじゃん」

市川さんは、俺の顔をまじまじと見ながら距離を詰めてきた。
睫毛バサバサだな、この人……と思った。


そんなことを思っていると、市川さんは突然、ハッとしたような表情に変わる。


「ねえ、そういえばあんた達バスケ部だよね?」

「え?」

そうだけど……答えると、市川さんは身を乗り出し、

「じゃあもしかして、近藤君も同じ班!?」

と更に質問してくる。近藤君というのは尚也のこと。


「そうだよ」

「やっぱりうちら、あんた達の班に入る!」

「え?」

急に市川さんのテンションが上がった。