俺はチラ、と後ろにある律の席に視線を向けた。

律は、机の中から教科書やノートを取り出し、次の授業の準備をしている様子だった。


「あのさ、コーヤ。同じ班になる女子なんだけど……」

「いいよ? 永倉さんで」

「ま、まだ何も言ってないだろ」

律のことに一言も触れていないのに、そんな風に言われると悔しくなる。


「違うの?」

「……違くないけど」

「うふ」

「うふじゃねー。その顔やめろ。それに、お前が思ってるような、そういうんじゃないから」


そう。そういうんじゃない。
ただ、友達して同じ班になれたら楽だし楽しいだろうなと思っただけだ。
コーヤと尚也と律が仲良くなれば俺も嬉しいし、ただそれだけの、単純かつ明確な理由だ。


「はいはい。でも、俺らの意見だけで決める訳にはいかないでしょ。永倉さん本人の意思もちゃんと聞かないと」

「分かってるよ。だからちょっと誘ってくる」

「頑張れよ~」


だから、頑張るとかそういう類の話じゃねえし。ただ誘うだけだし。
と、無言でコーヤを少しだけ睨み付けながら、俺は律の席へ向かった。