律に背を向けると、そのまま歩きだしたが、数メートル先の信号機が赤だったので、足を止めた。


……何となく、言いそびれたことがあるような気がした。
それが何なのかは、すぐに気付いた。
けれど、ゴールデンウィークが明けたらまた教室で毎日顔を見合わせるんだ。携帯だってあるし、わざわざ今言わなくたっていいだろう。


……そう、思ったけれど。


〝あの日〟みたいに、また後悔するような気がして。


だけど、振り向いて目を合わせて、こんなことを言う勇気はなくて。


だから。


俺は送る。




《今日、楽しかったよ》


何の収穫もなかったし、神主さんの話を正座で聞き続けて疲れたけど、律と二人で一日過ごせたことは、単純に楽しかった。


まあ、律にとっては本当に無意味な日だったかもしれないけど……それでも、ちゃんと伝えたいと思った。


この、意味の分からないテレパシー能力に早速頼っている辺り、我ながら情けねーとは思うけど。