神主さんに見送られながら、夕焼けですっかり赤く染まった石階段を下りていく。
収穫ゼロ。
あえて言うなら疲労感はたっぷりと全身にのしかかっている。別れ際の神主さんが満足気だったのが少々恨めしいくらいだ。


夕陽色の階段を下りながら、律が俺の手にちょんと触れ、テレパシーを送ってくる。


《ふたつ祈りの言い伝えは何も関係なさそうね》

「う〜ん」

全く関係ないとは意外だけれど、神主さんがああ言うのなら、きっと本当に無関係なのだろう。


じゃあ、一体きっかけは何だったのだろう。そもそも本当にきっかけなんて存在するのか?


「謎は深まるばかりだ」

思わず呟いた独り言に、律も《そうね》と賛同してくれる。


階段を下れば、すぐそこに大通りが見える。
まだ夕方の五時だし、家までは送らなくて大丈夫だろう。


「じゃあな、律。気をつけて帰れよ」

俺がそう言うと、律もコク、と頷いた。


「残り四日のゴールデンウィーク、有意義に過ごせよ」


別に、今日が無意味な一日だったという意味ではないけれど。考えようによっては、ふたつ祈りの言い伝えは所詮ただの噂だったということが分かったのだし。