クラスメイト達の自己紹介は、軽く聞き流していた。今ここで名前を覚えていく気になれなかった。

そして、自分の番が回ってくる。


「西條中学出身、長尾 達樹です。中学では三年間バスケをやっていたので、高校でもバスケ部に入ろうと思ってます。よろしく」


可もなく不可もない、無難な自己紹介でサクッと終わらせた。
あの頃までの俺なら、〝彼女募集中です〟とか、〝好きな選手は……〟とか色々言って、場を盛り上げようとかしたんだろうな。



その後も他の人達の自己紹介は、やっぱり聞くフリだけして俺は桜の花びらを見ていた。



……だけど。


しばらくして自分の順番が回ってきた為に席から立ち上がった女子がいた。
その時だけ、俺はその女子の方を見た。


……立ち上がったのは律だった。