桜もすっかり散り終え、青葉が茂り始めた。
心地良い風が吹き抜けて、過ごしやすい気温が連日続く。
今日も天気が良く、太陽が青空のもとでしっかりと働いている。

今日は、ゴールデンウィークの初日。
俺は律との約束通り、ふたつ祈りについて調べる為、神社の前で待ち合わせをしていた。


(……もう少しお洒落してきた方が良かっただろうか)

ここまで来て今更そんなことを思っても仕方がないのだけれど、Tシャツにジーパンという普段と何ら変わらない自分の姿を少しだけ悔やむ。

……って。いやいや、悔やむ必要なんてないだろ。
今日の約束は、あくまで調査。
デートじゃあるまいし、気合い入れた服装の方が不自然だろ。

とは言え、裾に変な染みを発見し、やっぱり違う服で来るんだったと結局後悔するのだった。


そうこう狼狽ていると、大通りの方から律が小走りにやってくる。


……私服の律、久し振りに見た。
ブルーのジャケットに、カーキのショートパンツ、足元はスニーカーというスポーティな恰好が相変わらずよく似合っている。

私服って、制服とはまた違って可愛く見え……いやいや、何考えてんだ俺!


俺の正面に立った律は、両手を顔の前で合わせ、恐らく〝ごめん、待たせた〟と言っている。


「いや、まだ約束の二時より早いから」

腕時計を見ながらそう答えると、腕時計とは反対の俺の手を律が握った。

突然だったから思わずドキッとしてしたのも束の間、頭の中にキーンというテレパシー発動時の音が頭に響いてきて、


《じゃあ、早速行きましょうか》


と、律がテレパシーで俺に伝えてくるのだった。


「お、おう」

そう答え、すぐに手を離して神社の石階段を二人で上っていく。